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主婦が起業をするとき

下総ゆかりさん 

大切にしているのは「日々感謝して生きる」こと。自立を目指して、あれこれと模索しつつ手にしてきた経験と持ち前のバイタリティを生かし、現在は2006年に立ち上げた食関連のオリジナルイベントを企画する会社「ソレイユ」代表。


バブルキャリア期と最初の転機

男女雇用機会均等法が施行された1985年に四年制大学を卒業し、就職した下総さん。男性と同じ条件で働く女性は初めてという環境の中、配属された営業企画部での企画と広報の仕事はとてもやりがいがあり、夢中で働きました。ただ、バブル経済が重なり、華やかな職場の雰囲気の中にも、仕事の責任とプレッシャーは非常に大きいものでした。本当にやりたいことを自分で見つけ、ステップアップするために資格取得を目指して学ぶなど、自分の適職を模索する毎日でした。

そんな下総さんにとっての最初の転機は、出産による退職です。仕事のストレスで体調を崩しながらも何とか仕事は続けていましたが、結婚し、妊娠5ヶ月のころに「子どもを生んで続けるのは苦しい」と悩み、退職を選択しました。「会社には出産後も仕事を続ける女性がいなかった。先輩がいなくて、モデルがいないというのは先が見えないですね」と、下総さんは当時のことを振り返ります。

三日で飽きた?専業主婦。 フランス語との出会い

これまで働き詰めだった下総さんにとって、専業主婦は夢でもありました。ところが、自分の収入が無くなったことで生活のゆとりが減り、妊娠で思うように身動きもとれず、仕事中心の夫とはすれ違う毎日。自分の行く先が見えず、苦しくて泣いてばかりのある日、大好きな本屋で偶然、フランス語のテキストに目が行きました。ごく軽い気持ちで始めたフランス語の勉強が、その後の下総さんのキャリアにずっと影響していくことになります。産院でも勉強のカセットを聞くほど熱中し、出産後6ヶ月目からはフランス語の専門学校へ。お子さんが小学校2年生のときには、夏休み中にフランス留学し、フランス語検定2級も取得しました。先日迎えた、そのお子さんの14歳の誕生日には「あれから14年たったんだと、感慨ひとしおでした」と語ってくれました。

しかし、「好き」を仕事にしたいと通訳を目指して猛勉強したものの、学ぶための経費は予想外に高く、地元では通訳の仕事も思うように見つかりません。マイナスの条件ばかりで萎えそうな気持ちに戸惑い、語学能力を仕事にして自立したい気持ちとの間での葛藤が続きます。

先輩との出会い。自立へ向かう、バラエティ豊かな仕事の体験

フランス語の夢を抱きつつ過ごす、お子さんが1歳ごろのこと。ある女性との出会いから、自立へ向けたさまざまな就業体験が始まりました。出会いを作ったのは、今では大先輩の、その女性が書いた新聞記事。心を動かされた下総さんは、その記事を切り取って半年以上も経たのち、思い切って彼女に電話をしました。彼女との出会いがきっかけとなり、自立を目指す女性をサポートするNPO団体の会員になってからは、選挙のウグイス嬢や原稿の取材、塾の電話当番、その後もファミリーレストランでの目まぐるしいアルバイトなど、バラエティ豊かな仕事を経験しました。「今のような人材派遣も無く、女性が子どもを預けて働くことに対して厳しい時代でした。彼女や、団体の女性たちの存在は、わたしにいろんな光を与えてくれました・・・。お互いにべったりしない女性の付き合いは、今もつながっていてすごく面白い!」と彼女は言います。

年収3000万、年商1億円の社長になる!〜食の花咲きコンシェルジュをめざして

 自分の力で生きていける仕事を追い求めて進んできた日々。会社員時代の貯蓄を原資として数々の勉強と経験、資格
取得を重ねてきた下総さんは、夫の影響もあって起業に関心を持つようになりました。関連書籍を何百冊も読み、さまざまな人との出会いをとおして自らの適職を模索した末、先輩の「やらない後悔よりやった後悔の方がいい。大きな借金をしない限り、失敗も売りになる」というアドバイスに背中を押されて、起業への第一歩を踏み出します。

そして20064月、食関連のオリジナルイベント企画会社「SOLEIL(ソレイユ)」を立ち上げ、代表に。目標は大きく、「年収3000万、年商1億円」!フランス語の「太陽」という意味の社名には、あったかくて、みんなを照らすような会社にしたいという思いが込められています。それからは、地元に一流シェフを招いての料理教室や、グルメツアー、抹茶の売り込みのために体当たりでフランスまで出かけて営業もするなど、出会った方との縁をビジネスに発展させた企画を、次々とこなしました。しかし動けば動くほど赤字になってしまう暗中模索の時期もあり、不安は尽きませんでした。

今のわたしにとって大事なもの

 不安を払拭し、前向きな力につなげたい。20089月、自分のキャリアを再確認するために、下総さんはアメリカで行われた9日間のセミナーへ参加しました。そこで確信した人生のキーワードは、やはり「語学」と「食」、そして「コミュニケーション」。それから何より、商売で一番大事なことは、やはりお客様に喜んでもらうことだと気づいたのです。「まず赤字を出さない程度で、自分の心にいつも素直に行動し、皆さんが喜んでくださることから始めてみよう」と思った彼女。そのセミナーへの参加で、ものの考え方にも徐々に変化が現れ始めました。

「自分が好きなことって、楽しいから苦になりません。本当にやりたいことがあるなら、どんな形でも続けることが大事なんだなって今は思います。それに本を何千冊読むよりも、自分が動いて体験することが大事。そして自分ですっ転んで立ち上がることが大事。この年にして腑に落ちた気がします」という彼女。「年収の目標も諦めていないけど、それは通過点。今は語学を生かし、食で海外とつながってコミュニケーションしていくことがもうひとつの目標になりました。自分や周囲に“ありがとう”と感謝の気持ちで、自分が楽しく企画すると、楽しい人が集まってくる。自分がニコニコしていると、周りもニコニコする。その輪がどんどん広がっていくとやっぱりいいじゃないですか。世の中も幸せでいっぱいになるから」と、笑顔で結んでくれました。


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