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NPOでの持続可能な仕事づくり

中村奈津子さん 

7年の専業主婦生活のあと、三女が1歳のときにNPO活動に加わり、週1日のペースからNPO法人で「まず一歩」の仕事開始。現在は、NPO法人常任理事およびプロジェクト責任者。


不安の中、再チャレンジへ

 学生時代は、将来人と関わる仕事がしたいと、漠然と考えていた中村さん。紆余曲折を経てたどり着いたNPO法人での活動が、これまでの関心や経験とさまざまにつながっていることを、振り返って不思議に感じると、穏やかな口調で話し始めました。

中村さんは1988年に短大を卒業後、食品メーカーへ入社。営業部に所属し、約3年半勤務しました。退職、結婚の後は、いくつかアルバイトをしたり、資格に挑戦したりと、手探りで次のステップを目指す日々。しかし長女を妊娠中にアルバイトを辞め、専業主婦になってからは、1年置きで3人のお子さんに恵まれたこともあり、外へ出て再就職するタイミングはなかなか訪れませんでした。  

専業主婦の生活では、長女が1歳から関わり始めた子育てサークルの代表をしたり、託児グループに参加したりと、地縁のない生活の中、人とのつながりを模索します。地域活動を積極的にこなしていく中村さんでしたが、どの場所でも自分と社会がつながっていると実感できなかったのは、個人としてではなく、子どものママとして常に存在しているという気持ちがあったから。何より、再就職への道筋も気になっていました。「再びきちんと働きたいけど、そのころに自分が使いものになるんだろうか。このまま何もしないでいると、自分が世の中から取り残されていくような不安がありました。」仕事への思いは徐々に膨らみ、とにかく彼女はできるところから動くことを決意。長女を保育園の年少組に入れ、内職を始めます。

まず一歩が、次の歩みへ

 細々と内職を続け、その翌年には次女も入園。末っ子が1歳になった2002年、中村さんは友人を介して、女性の社会参画を支援するNPO法人と出会いました。翌2003年、名古屋市男女平等参画推進センターがオープンをし、そこで委託業務を請け負った団体がスタッフの募集をしていると聞いた中村さんは、迷った末、応募を選びます。決め手は「週1日でも良いから」と、長時間働くことに制約のある女性たちが働きやすい仕組みを提供してくれていたこと。それが外へ働きに出る、はじめの一歩でした。

中村さんは末っ子の預け先を探し、上の2人とは違う保育園の一時保育に委ねることに。体力的なハードさはもとより、子育てと仕事の両立は葛藤の毎日でした。しんどくて、何度もやめようか悩みましたと苦笑いした彼女。それでも諦めなかったのは、1回ここで仕事を中断したら、あと何年間も諦めることになると思ったからだと言います。重なる子どもの病気や地域活動などに、職場の仲間の協力と深い理解をもらったことも、大きな支えとなりました。

中村さんの働き方は徐々に変化し、次年度には仕事量が週34日に。その翌年度の後半には、プロジェクトの責任者を担うようになりました。

そのときに120%の自分を出すことが、次につながる

 中村さんは働き始めて2年目から、法人が自治体から委託を受けた講座での講師活動も始めました。これは、自分にとっては失敗の連続で、落ち込むことが続いたと言います。そんなとき、彼女の背中を押してくれたのが、ある先輩の言葉でした。「自分で決めたときが、あなたがプロになるときなのよ。それは、外側の人間が決めることじゃない。資格を取ったからといってなれるものでもない。大事なのは自分で自覚して人前に立てるかどうか。ダメだったら、次から仕事は来ないから(笑)。それだけじゃない?」と。不安を吹っ切れた中村さんは、それ以後、与えられた仕事はどんなことであれ、常に120%の自分で取り組むことをモットーとし、それで次の仕事がこなければ、それは納得できると思っているのだとか。

 いただいた仕事の上で、胡坐をかいているのだけは嫌だ。講師活動の幅と深みも、もっと欲しい。そう思っていた中村さんは、仲間が大学院で学ぶ姿を見て、20064月に、自分も放送大学の門をくぐりました。また、2005年に仲間と立ち上げたNPO法人参画プラネットが、2006年度から名古屋市男女平等参画推進センターの指定管理者になったことがきっかけとなり、2007年にはマンション管理士、管理業務主任者資格も取得。仕事の幅は確実に広がっています。

人とのつながりで、自分が作られてきた

 専業主婦から、子育てと地域活動を抱えつつ仕事へ再び歩みだす過程は、中村さんにとって決して簡単な道のりではありませんでした。迷いや葛藤も多く、思い通りにいかないこともしばしば。しかし、子育て初期に出会った友人や知人、保育園で出会った先生、NPO活動で得た仲間や同じ活動者の先輩たち、それら全ての人たちとのつながりで、自分はここまで来ることができたと言います。

今まで歩んできた道は、強い意志や意図を持ち、主体的に選んだわけではないことも多いけれど、どうにもならない状況も含めて全てと真摯に向き合い、できることを少しずつ、積み重ねてきました。彼女は、それらは自分の努力だけではなく、そのときどきの周囲からの支えがあってこそ乗り越えられたのだと信じています。家族も含めて、出会った人たちからもらってきたいくつもの共感と理解、励ましと協力がなくては、今の自分はありえない、と。

NPOは、わたしが大切にしたい「人とのつながり」を実感できる場所

 最後に、中村さんはNPO活動の魅力を語ってくれました。「ダイレクトに人とつながれたと感じるのは、NPO活動ならでは。そこに、お金のやりとりだけではないものが交流しているのがすごく分かるんです。相手とのコミュニケーションをとおして、その人の人生や行動から生まれるエネルギーをいただくし、それが自分の、社会に働きかける力にもなることを実感しています」

自分が抱える問題が社会の問題とつながっているということに気付くことができたのは、今の活動と仲間に出会ったから。自らの活動をとおして社会変革のメッセージを発信していくやりがいを仲間と共有できるのも、NPO活動ならではだと言い切る中村さん。いろんな人に背中を押してもらった経験を次の人に伝えたいと、今後の新たな出会いを楽しみにしています。



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