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女性の視点で考える
防災・災害復興 発信フォーラム 報告

  今年は、阪神淡路大震災から12年。

  干支が一回りして亥年がめぐってきた1月13日(土)に、
  「女性の視点で考える。防災・災害復興/発信フォーラム」を開催しました。

  第1部は、昨年の夏と秋に実施した「女性の視点で考える。防災・災害復興/事始フォーラム」の報告と
  当日限定の「阪神大震災」のビデオ・プレゼンテーション。

  第2部は、コメンテーターに石井布紀子さん、川畑真理子さんをお招きして、
  参加者とともにディスカッション。

  当日は、「防災食」として缶入りのパンが配布され、各地の報告書のパネル展示も行われました。

  12年という月日は、震災の当事者であり、
  コメンテーターを担当してくださった石井布紀子さん、川畑真理子さんにとって、
  さまざまな意味をもっていることが再度、確認されたのです。

  「女性の視点」とともに…「生活者の視点」を打ち出そう!
  備えあれば憂いなし…という思い込みから脱出しよう!
  「何とかなるさ!」という気持ちも大切に…アクション・プランをつくろう!

  今年も、「つながり、乗り越える。」
  アクション・プランが始動しています。(渋谷典子)


            防災・災害復興 発信フォーラム(会場:つながれっとNAGOYA 交流ラウンジ)
      
                                  写真―右から、川畑真理子さん、石井布紀子さん、渋谷典子さん


 発信しよう!わたしの思い (愛知・岐阜・三重・静岡4県の報告者からの発信)

毎年1月になると、震災の映像がTV画面に映し出される。震災を風化させないために、また、今後予測される大地震に備えて、何ができるのか、12年前の人々の表情が語りかけている。

今回講師としてお招きしたお二人は、ともに阪神淡路大震災の被災者であり、震災後の復興支援に深くかかわった方々である。毎年暮れから年明けにかけて、言いようのない重苦しさが心に圧し掛かるのは、お二方とも共通のようだった。死と隣り合わせの瞬間に遭遇したこと、自然の驚異の壮絶さ、大切なものを失くした喪失感といった様々な実体験は、被災者の中にいつまでも鮮明に残り、癒えることがないのだということを改めて実感した。しかし、痛みを抱えながら語られる経験こそが、私たちにとっての財産であり、この実体験を活かしていくことこそが重要なのだと感じた。

講師の川畑さんは、震災6日後から女性センターにおいて総合相談窓口を開設し、相談業務に携わった方である。直後の“怒り”の電話に始まり、日を追うごとに変化していく相談内容は多岐に渡るが、この情報社会において日々情報は発信されているのに、必要としている人に必要としている情報が届かない、あふれる情報に逆に不安になるという部分は今まで気がつかないところだった。あらゆる情報を集め、混乱する人々に代わって取捨選択し伝えていく橋渡し的な業務は、総合相談窓口の大きな成果だった。今までなかなかイメージできなかった防災における女性センターの役割が、私の中で少しずつクリアになってきた。また、災害時にこそ社会の脆弱さが露呈する。そこには女性の雇用問題や、“震災同居”という言葉に象徴される、家事を一手に任される女性の辛さなどがあり、根深い問題が一気に噴出するということなのだろう。

東海4県計8回行われた防災フォーラムで、私たちは各地区での現状や課題、どう政策提言に結び付けていくかを話し合ってきた。名古屋の2回と今回のまとめのフォーラムに、スタッフ、そして一市民として参加して私が感じたことは、災害復興とは、被災者自身が勝ち取っていくものであるということだ。それゆえ、いかに早く質の高い復興を成しえるかは、被災者が元気になるしくみがどれだけあるかということである。生活者の視点に立った政策提言や、生活者レベルのネットワークが重要となる。さらに、生活の中での災害復興には、型にはまらない柔軟な対応のできるシステムが必要なのだ。今回辛い思いを抑え、笑顔で時に冗談を交えながら語ってくださった川畑さんには、自分自身に伝えていく使命を感じていらっしゃるように感じた。私たちは12年間の神戸からの災害復興のメッセージを受け取り、いかに防災を進めていくのか考えなければならないと強く思った。
                                                     (高島由美子)


第1部では4県(愛知、岐阜、三重、静岡)からの報告が集まり、
わたしは岐阜からの報告者として、パワーポイントを使っての発表を行った。
岐阜では、地域の課題を丁寧に把握して災害対策へ反映させていくことの重要性と、
普段から活動のネットワークを築いていくことの意義を再認識でき、
それぞれが「女性という視点で、防災にどのようにアプローチするのか」「わたしは災害と
どのように向き合い、行動していくか」という意識を高める機会になったように思う。

そして今回のフォーラムでは、映像上映とコメンテーターからの提言をとおして、
ひとりひとりの暮らしに寄り添った「生活者の視点」で、しかも長期的な視野をもって
防災・災害復興を考える姿勢も大切だという点を学ぶことができた。

新聞などのメディアでも報道されているように、阪神大震災から12年が過ぎた今も、
人々の暮らしが安定し、充分に復興したとは言えない状況にある。
大規模災害が起こったときに、いかに甚大に人々の日々の暮らしが損なわれることか。
それは、雇用の問題であったり、住居の問題や変化する家族関係の問題であったり、
普段の、身近な生活に大きく係わる部分である。
そして建物や道路を修復するように、単純に「元に直す」ことの難しい傷でもある。
行政、市民、企業がそれぞれ、この「暮らしを支える」という意識で災害対策を考えることが
いざという時の大きな力になるのだと強く感じた。

コメンテーターのお二人からは、上記の提言だけでなく、
「“備えあれば”というけれど、完璧を求めすぎなくてもよい」
「いざという時、いろいろなものが不足した状況の中で力を発揮できるようなエネルギーを
ひとりひとりが蓄えていくことが大切」という励ましとなるメッセージもいただき、
それには参加者の皆さんも深くうなずいていたように思う。
わたしも、「わたしにできること」と「センターのスタッフとしてできること」を
これからも考え、機会を得て発信していきたいと思っている。
                                                    (中村奈津子)

「女性の視点」で考える防災・災害復興 発信フォーラムが開催された。これは7月から東海4県(岐阜市、四日市市、名古屋市、静岡市)で行われてきた「女性の視点」で考える防災・災害復興 事始フォーラムの報告会でもある。第1部では、事始フォーラムの報告と「映像で知る大震災」の上映。第2部はコメンテーターに石井布紀子さんと川畑真理子さんをお迎えし、参加者とともにディスカッションを行った。

四日市での「事始フォーラム」では、講師の石井布紀子さんから震災時の体験を伺うなかで、身近な情報を活かした的確な判断が多くの人の救助につながったことや女性の自発的な活動に注目した。身近な情報や女性の活動を活かした私たちならではのネットワークづくりが大切だと話し合った。また、避難食の体験では、失敗しないようにと作り方や過程を完全に教えてもらおうとする私たち。「これ(材料)を使うのは初めて。どんなふうになるのか楽しみ!」という石井さんの言葉が新鮮に響いた。

今回の「発信フォーラム」にお迎えした川畑真理子さんは、元兵庫県立女性センターのカウンセラーとして震災3日目にはセンターに駆けつけて相談窓口を担当された。情報と相談を結びつける取組や相談を政策提言につなぐという視点が印象に残った。また、震災時に開設された「総合相談窓口」の状況を知り、相談の分野においても広域ネットワークの重要性を実感している。

3回のフォーラムを通し、被災者でありながら、直後から復興に関わってこられたおふたりから貴重な話を伺うことができた。おふたりのお話から「女性のおかれている状況の理解」や「刻々と変化するニーズへの対応」、「生活者の視点を活かしていくこと」「柔軟なこころ」などいくつかの共通点を見出すことができる。異なった分野で活動を続けてこられたおふたりから見出す共通点は興味深い。

12年の歳月を経てもなお強く残る思いを感じ、このフォーラムで話し合ってきたことを次のステップへと進めたい。
                                                   (林 やすこ)

1月13日、「女性の視点で考える。防災・災害復興/発信フォーラム」が名古屋で開催された。昨年の夏と秋に名古屋、岐阜、四日市、静岡の4会場で実施した「女性の視点で考える。防災・災害復興/事始フォーラム」の報告会を兼ねたものである。

第1部では私を含め4会場の担当者が話し合われた現状と課題、各地で定めたテーマと提案を順に報告した。それぞれの地域性が見られ興味深かったが、「地域コミュニティへの女性の参画の難しさ」など各地で共通の課題も多かった。

静岡では30年以上前から東海地震の発災が予想され、地域ごとの自主防災の組織化は90%を超え、建物の耐震工事も進んでいる。しかし、防災活動のマンネリ化など不安も多い。

静岡での「事始フォーラム」では、講師の石井布紀子さんから女性を支援される側、弱者として捉えるだけでなく、支援する側に立てる存在であることを指摘されたことが印象に残った。今回の「発信フォーラム」には元兵庫県立女性センターのカウンセラーとして震災3日目にはセンターに駆けつけて相談窓口を担当された川畑真理子さんをお迎えした。時間経過による相談内容の推移や情報ファイルの方法など、貴重な話を伺うことが出来た。川畑さんは求められるものが刻々と変わっていくなかで相談窓口が生活者ニーズを敏感にキャッチできる場だと確信し、それを政策の場につなぐ役目を担われた。

印象に残ったのは、川畑さん、石井さんともに「備えは必要だが、一番大切なことは心の柔軟さ」「何とかなる、3人いれば大丈夫」とおっしゃった楽天的ともいえる言葉だった。あれもこれも準備出来ていない、備えがないという不安が払拭された。

「つながり、乗り越える」を合言葉に、今後も4都市で連携しながら提言した防災・災害復興のアクション・プランを実現していきたい。
                                                    (松下光恵)


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